信仰の証
主の恵みを交わし。

永遠の愛に抱かれて(伊藤 嘉子)

投稿者
tbic
投稿日
2020-12-14 23:26
閲覧数
142
確かな愛のひとこま

限りなく美しい青い青い空を見ていたら・・・どこからか安らぎが川の流れのように流れて来て、私の心のベールを一枚ずつ溶かすかのように、ゆっくりと優しく私を素直さの中に招き入れてくれた。そしていつしか、遠い日の少女の私の心が、脳裏に写し出されていた。「ねぇ、お父ちゃん、なぜ空は青いの?あのふあふあ雲は誰が造ったの?」三つ違いの兄が父に尋ねると、「夕べ広ちゃんが寝ている間に、神さまがお空を広ちゃんの大好きな青色にぬり変えて、白い雲まで描いたんだよ」幼い日の父と兄の会話する傍で、次は私の番だと兄をせかしながら、負けずと口をはさみ「お父ちゃん、あの夕陽と同じ色が出せないよ」とパレットを差し出すと「神さまの造った色はお父ちゃんにも出せないよ。だからその美しさに感動した心を描くんだ」と父。忙しくて子供との時間が少なかった父の、せめてもの心配りなのか、絵心を教えようと父が私たちの質問に答えてくれた時は決まって、自分の膝に私たちを乗せ、背中から強く抱きしめ、耳もとで優しく囁いてくれた。あったかく大きなその膝の中はいつも兄と奪い合った唯一の私たちの安全地帯・・・そのぬくもりを今だに私の背中が覚えていて、今もなお込み上げてくる想いをどうすることもできない・・・美しくも、父と子だけが結ぶ確かな愛のひとこまだった。こんな幸せなひと時が、一瞬にして崩れ去ろうとは誰が想像できたであろうか、がしかし、悲しくもこの会話が父が私たちに残してくれた最後の言葉となってしまった。その後、父は帰らぬ人となったのである。その悲劇を理解するには幼すぎた私だったが、兄にとっては残酷にも自分を傷つける結果となった。自分がもっと良い子であったらと、父がいなくなった原因をすべて自分のせいにし、小さな心に抱えきれぬほどの悲しみと後悔を背負い、なおも母をいたわり続けていた。時折震えながら母に謝る兄を抱きながら「おまえのせいではないよ、大丈夫、お母ちゃんがいるから、しっかりしなさい」と、気丈に励ます母の背中もやはり泣いていた。愛はそれが純粋であればあるほどより深い痛みと傷跡を心にきざむもの・・・優しく透明過ぎる兄の心に鋭く刺し通った深い傷は、決して癒えることなく彼を精神的な病いへと導いた。大好きな父に捨てられ、大切な母を苦しめて、自分など生きてゆく価値もないと・・・いつしか兄は生きることを断念していった。母が心を込めて準備した成人式の真新しい背広に手を通すこともなく、兄はあまりにも急ぎすぎる死を迎えた。彼の強い死への願望が彼の命をいっきに飲み込んだのである。

父なる神の涙

ガラス細工のようにもろく弱い愛するわが子・・・母親の痛みを自分の痛みとし苦しんだ我が子を死にあけ渡してしまった母の想いは、いくばくのものであったであろう・・・人は苦しみがあまりに深すぎるとそれを自分の記憶から抹消しようとする働きが起こるのであろうか・・・あまりにも悲し過ぎる母の心から目をそらし、真剣に考えることをさけて今日まで来てしまった私・・・が今、目の前に広がる美しい空の無限の青さが、走馬灯のようにその記憶をクリアーにし、今一度、過ぎし日の悲しみをしっかりと直視することができた。父を・・・兄を想い深く深く祈った。そして母の言い知れぬ痛みと忍耐を思って泣いた。自分の命以上のものであるわが子を失った母の悲しみが、天の父なる神の苦しみと重なった。最愛なる御子を十字架に捧げなければならなかった、父なる神の痛みと孤独・・・神はひとりで苦しみあえいだに違いない。止めどもなく頬をつたう涙を拭いながら父なる神の涙を思った。「神様・・・」言葉にならない鬱積した感情が心の奥深いところから涙となって溢れ、流れて・・・ふと見上げた大空のかなたから神の声が聞こえた。

「愛する我が子よ、あなたの泣く声をとどめ、目の涙をとどめなさい。あなたの労苦には報いがあるから」(エレミヤ三一・16

そして「彼らが苦しんでいたとき、いつもわたしも苦しみわたしの使いが彼らを救った。その愛と哀れみによってわたしは彼らをあがない昔からずっと背負ってきた」(イザヤ三・9

・・・なんと神は、私たちの嘆きを知り共に苦しみ、背負ってきてくださった。鮮明に語られた神の生きた命の言葉が、私の弱った魂に新しい命を吹き込み、渇いた心に生きた命の水が注がれて、今私に、愛が溢れ安らぎが訪れた。神が私の人生に許されたこの苦しみが喜びに変えられた歓喜の瞬間・・・何か美しいきらめきが、あたりの空気を輝かせ言い様のない喜びが私の心いっぱいにはじけた。それにしても、一瞬にして私の心の色を変化させる神の愛の御言葉とは・・・からだが呼吸を必要とするくらい、私の魂は神の愛のささやきが必要なのであろうか。もう何度、いや毎日感動させられてきた真実なる神の愛の迫り・・・私の人生に起きた苦しみの経験の数だけ、神の圧倒的な愛に支えられてきた。

「苦しみに会ったことは、私にとって幸せでした。」(詩篇一一九・71

感動する美を求めて

思えば幼い日、父が私に教え残してくれた「美しさに感動する心」を探しに、人生の旅のスタートを切った純粋な若き日、究極の美を求めて世界の舞台に立ちたいと必死で国際ライセンスを獲得した。人の持っている美しさを最大限に表現する仕事こそ私の捜し求めたものだと確信しあらゆるコンテスト、ライセンス取得に専念していった。学習ノイローゼに悩まされながらも決してこの道を断念しなかったのも「感動する美」への執着だったかもしれない。TVやファッション雑誌でしか見ることのできなかった有名アーティストや芸能人と肩を並べて仕事ができる、夢にまで見た世界・・・。世界のアーティストや、国々から選ばれた美しいトップモデルがその美を披露するパリコレクション、幼い頃から憧れた女優さんのヘアー&メイク、すべての仕事がエキサイティングで、美しい人との出会いが起こされるこの世界にどんどん魅了されて行った。がしかし、華やかな美の世界の裏にうごめく複雑な人間模様に言いようのない空しさを覚え、いつしか「感動する美」を求めた自分からまったく遠ざかって行った。そして一人の尊敬する人の死によって、私の人生への挫折は頂点に達した。地位や名声や財産を誇るこの世界で、一躍トップの座を自力で築き多くの名声と功績を称えられながら彼は不治の病に倒れ、一瞬にして世を去った。人の命のはかなさ、無力な肩書き社会、どんなに一生懸命力の限り努力しても人はみな死に、すべてが終わり忘れ去られる。まして「感動する美」など人の命の豊かさに何の役にも立たなかった・・・。

美しい命の輝きに出会って

そう呟きながら、知らない町を当てもなくさ迷い歩いていた。かつて大きな夢と希望を膨らませて訪れた大都会・・・誰よりも一心に美しい夢に向かって頑張ってきたその世界は、きらめきに満ちて見えた。が、今自分の目の前にそびえ立つ大都会は絶望と暗黒の世界に見えていた。冬の足音が近づく大都会の言いようのない寂しさは、生きる力も奪い去ってゆく。ふと遠くに目をやるとベンチに座るひとりの婦人に目が止まった。その姿が何か光輝いていて、吸い寄せられるように近づくと書物に手を置き静かに祈っておられた。「聖書だ」と思わず口走った瞬間から心の奥底からこみ上げてくる感情をどうすることも出来ず、声を出して泣いていた。その光景は、まるで暗い部屋にパッと灯りがともされる様に、落胆と絶望の私の心に一筋の命の光がさしこんだ。不思議としか言い様のないほど、一瞬にして私の心を変化させた。この外部からの力・・・一体これは、居ても立っても居られず、クリスチャンの友人を訪ね、事の一部始終を話した。すると「イエスさまに出会ったんだね、もっと豊かな人生にあなたを導きたかったのよ」と彼女。「豊かな人生って何」と私が続けると「イエスさまと共に生きる人生」と結んだ。静かに語る彼女の熱い瞳の奥にイエスさまが見えるような気がした。決して華やかさこそないけれど、婦人の祈る姿に人の心を深く動かす圧倒的な美しさがあったように・・・やはり「感動する美」はあるんだ、と確信に満ちた喜びが心に立ち上った。

永遠の愛に抱かれて

イエスさまと共に生きる人生・・・これこそ私が願い求めてきた豊なる美しい人生、人間が本来持つ美しい輝きこそは、私たちの内に生きてくださる主ご自身の輝きに他ならないのでは・・・限りなく大きな神の愛に支えられ、今新たに人生を始められる。そんなときめきが私の心を支配した、あの救いの日・・・見上げれば青い空、輝く太陽、気がつけば若葉が茂り花が香り季節が巡る、こんな美しい地球に住みながら気が付かなかった。ただ自分の力だけを信じて地位や名声をがむしゃらに求めてきた。今思えば、肩書きを付けることでもっと認められたい、もっと愛されたいと願い、無意識のうちに父親の愛の欠如に傷んだ心を形あるもので埋めていたのかもしれない。そして遂に出逢った決して朽ちないイエスさまの愛に・・・私の人生に繰り広げられたさまざまな出来事を、感謝せずにはおられない「私はあなたのなさった全てのことに思い廻らし、あなたの御業を静かに考えよう」(詩篇七七・12・・・兄への、出口の見えない苦しみがあったからこそ、今日も生きていくことが大変な人に心を注ぐことができ、父との悲しい離別があったからこそ、心病める孤独な人に、神の愛を届けることが出来る。そして人生の大きな挫折があったからこそ、神との生きた関係が人間の真の美しさへの根源だと悟ることが出来た。小さき私を、何と神はご自身の喜びとし神の愛の対象として私の人生の物語を綴ってくださった。その永遠の変わらぬ深い御愛に胸が詰まる・・・命の日の限り、神さまの限りなく深い愛に応え、御心を行う者になりたいと切に願いながら今日も神の美しさの只中に生き、輝けることの幸せをかみ締めた。春風に優しくそよぐコスモスのかたわらで、静かに祈る母の姿は永遠の愛に抱かれて美しく輝いていた。

主は遠くから、私に現われた。「永遠の愛をもって、わたしはあなたを愛した。それゆえ、わたしはあなたに、誠実を尽くし続けた。」(エレミヤ三一・3
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